Amazonで古書を買う

古物商の話をしたが、今回は購入について述べたい。

本好きが高じて東京に出てきた私にとって、古本の街・神保町は長年憧れの街だった。若いころは毎日のように通っていた。それがこの10数年、とんと行かなくなった。といううより、行く必要がなくなった。

現在、私の本の買い方はこうである。あるジャンルの本が欲しいとなると、①Amazonでまずどんな本があるのかを調べる。②近所の図書館でそれらの本を借りる。区立図書館の場合、30冊まで借りられるので、どんな本があるのかを調べられる。ざっと調べ、③必要なものはAmazonの中古本を買う。こうした方が、古書店を歩くよりすっと効率がいいのである。

今は専門書以外、おおむねきれいな本が来ることが多い。ネットを見ると、そうした古書店に対する不満をよく目にする。要は買取価格が安いのだそうだ。また、きれいな本しか引き取ってもらえないらしい。段ボールに入れて送っても値が付かず、処分されるのだろうか。古書店も遺品整理する時代、古物商に違いはないのだ。

こちとら、今までは購入専門で、ネットで商売をしているお気に入りの古書店は、どちらかというと評判が悪い。買取価格が安く、きれいな本しか買い取ってくれないからであろう。逆に言えば、私はそのおかげで、安くきれいな本を買えるのである。

しかし、その報いは必ず来る。自分が古書店に本を持って行ってもらう時期が来たからである。私は過去に2度古書店で本を処分したことがある。20代の後半、東京に出てきて、私の財産といえるものは、本とレコードであった。遊ぶ金、酒を飲む金がなく、自堕落な私はそれらを処分し、お金を作ることにしたのである。それぞれ10万円強になった。しかし、悪銭身に付かず。借金を払い、友人と1週間飲み歩いて、みんな無くなった。自業自得である。

次いで40代半ば、やはり場所がなくなって、不必要な本を処分することにした。雑本が多かったが、それでも、1回目の処分の時の倍以上の量があった。そんなに期待してはいなかったが、5万円とちょとにしかならなかった。その金額を聞いてがっくりしたが、持って行ってもらうしかなかった。もう売るまいと思った。

69歳で白血病になり、要介護5、車椅子で退院した。4回治療予定のうち2回目終了の時、副作用がひどいので「これ以上治療ができない」と医師から宣告された。リハビリで少し回復すると、私は「いつ再発で逝くかしれない」と思い、いくばくかでも自分の荷物を処分しようと考えた。

まずは本である。しかし、値踏みされるのが嫌だったので、自分で本をくくって、残紙屋さんに持って行ってもらうことにした。まだ今ほどには回復していなかった。要介護の時期である。大変だった。なんとかせねばという思いだけで、やっていた。家内に手伝ってもらい、マンションの1回に本を積み上げたときはほっとした。